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マラソンと心臓突然死について

[2025.07.14]

今年にマラソン中の突然心停止に関する初の研究(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1106468)の続編となる、現時点で最も包括的な研究が発表されました。

マラソン中の突然死や、AEDによって命を取り留めたというニュースは、皆さんも時折目にすることがあるかもしれません。今回ご紹介するのは、そうした事例の背景や原因、対策について詳しく検証された最新の研究です。

今回の研究:https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2832121

背景:市民マラソンの普及と心停止リスク

2010〜2023年の間、アメリカではフルマラソンおよびハーフマラソン完走者が約2,930万人に達し、前の10年間(2000〜2009年)の約3倍に増加しました。
一方で、今回の研究では、運動中の突然心停止の発生率自体は過去と大きく変わっていないことを明らかにしています。

結果:心停止の発生率と死亡率

  • 心停止発生率:10万人あたり0.60人(2000〜2009年は0.54人)

  • 心停止関連死の発生率:10万人あたり0.20人(従来は0.39人)で約半減

  • 性差:男性が女性の約6倍(1.12 vs 0.19 / 10万人)

  • 距離別:フルマラソン > ハーフマラソン(1.04 vs 0.47 / 10万人)

原因

心停止の病因が特定できた例(全体の52%)では、

  • 最も多かったのは冠動脈疾患
     → 症状のない動脈硬化やプラーク破裂が、心室細動の契機となったと考えられました。

  • 過去に注目されていた肥大型心筋症などの構造的心疾患の割合は減少しており、虚血性心疾患の評価がより重要とされているようです。

心肺蘇生とAED

  • 心停止からの生存率は約66%に上昇しました(2000〜2009年は29%)

  • 全例で心肺蘇生が行われ、多くの症例でAEDが活用されていたとのことです

  • 特に「心停止から除細動までの時間短縮」が予後改善に寄与していました

ハイリスク者の同定と対策

今回の研究では、大会開催前に高リスク者を適切にスクリーニングすることや、

  • 心肺蘇生講習の普及

  • 効果的なAEDの配置
    が心停止による死亡率をさらに低減するために重要であると述べております。

私たちは、マラソンという素晴らしい健康習慣は重要だと考えていますが稀ではあっても重篤な心停止リスクについても正しく伝えていくことが責務だと考えています。
日頃の生活習慣病や心臓のチェックに加えて、万が一に備えて心肺蘇生を学んでおくことは、誰かの命を守る大切な備えになります。

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