脂質異常症
脂質異常症とは?
脂質異常症は、血液検査で中性脂肪、悪玉(LDL)コレステロール、善玉(HDL)コレステロールのいずれかが基準値から外れているときに診断されます。
特に、悪玉(LDL)コレステロールが高い状態が続くと、動脈硬化が進行し、血管が詰まったり狭くなったりする恐れがあります。重大な合併症として、心筋梗塞、大動脈瘤破裂、脳梗塞、脳出血などが起こる可能性があり、これらの病気は発症すると、命に関わったり、寝たきりや後遺症が残る恐れがあります。コレステロールが高いだけでは、全く症状もないしちょっとくらい高くても大丈夫だろうと思っていると、ある時一瞬にして健康な日常を失ってしまうこともあります。
実は、悪玉(LDL)コレステロールだけでなく、善玉(HDL)コレステロールの値も重要です。善玉(HDL)コレステロールには動脈硬化を抑える働きがあり、この値が低いと心臓病や脳血管疾患のリスクが高まるといわれています。是非、善玉コレステロールの値にも注目してみてください。
原因
・不規則な食生活(動物性脂肪、飽和脂肪酸、糖質の過剰摂取)
・運動不足、肥満
・ストレス
・加齢
・喫煙、アルコール
・遺伝(家族性高コレステロール血症)
・薬剤(ステロイドやピルなど)
・閉経後
高血圧などと同じく、生活習慣の乱れにより発症することが多いですが、両親が高コレステロール血症であったりすると発症リスクが高く、必ずしも生活習慣も乱れがなくても発症することもあります。遺伝的なものでいえば、300-500人に1人のが遺伝性疾患である家族性高コレステロール血症であると言われいています。
女性の場合、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に低下することで、コレステロール値が上昇すると言われているため、閉経後に脂質異常症が指摘されることが多々あります。
検査
・問診、身体診察
これまでの心臓や脳の病気の有無や飲酒やタバコの習慣、家族にコレステロールが高い方がいるかどうかをお聞きします。
家族性高コレステロール血症が疑われる方では、手、肘、膝などに黄色腫があるかどうかをチェックします。
・血液検査
基本となる中性脂肪、LDL、HDLコレステロール値を計測します。また、同時にその他の生活習慣病である糖尿病の検査や腎臓肝臓などの検査項目もスクリーニングします。
予防と治療
脂質異常症の治療は、まずは食事・運動療法であり、その次に薬物療法を行うことが基本です。
最初の食事療法ですが、動物性の脂肪を多く含む肉や卵の黄身、バター、マーガリン、、マヨネーズなどは控えめにとることが重要です。一方で、野菜や果物、穀物などの食物繊維はしっかり摂るようにしましょう。適度な量で食べ過ぎないことも重要ですね。
次に運動療法です。有酸素運動が中心となり、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどを週3~5回、1回30分以上行うとよいでしょう。年齢や性別でそれぞれできる運動が異なるので、まずは自分でできる有酸素運動から挑戦してみると良いと思います。有酸素運動に加え、どのようなものでも良いので筋力トレーニングを組み合わせるのがおすすめです。運動を続けること、善玉コレステロールが増え、中性脂肪が減る効果が期待できます。
1〜3ヶ月の食事・運動療法だけでは検査値が十分に改善されない場合に、薬を使って治療を行うことをお勧めします。主な薬にはスタチン系の薬がありますが、これは悪玉(LDL)コレステロールを下げる働きがあります。スタチン系の薬は非常に効果が高く、よく使用されますが、まれに副作用として筋肉痛や身体のだるさなどの症状が出ることがあります。採血でもCKという筋肉の酵素や肝臓の酵素が上昇することがあります。初回投与する時は、これらの副作用の症状の確認や2週間後を目処に採血をフォローすることで副作用の有無を確認します。何か症状の異常を感じた場合は、必ず主治医に相談しましょう。
このように、食事、運動、薬物の3つを組み合わせて総合的に治療を行うことが大切です。定期的に検査を受け、コレステロール・中性脂肪の値が目標の範囲にあるかをチェックしながら、治療を続けていきましょう。
まとめ
脂質異常症は生活習慣病のうちの1つで、症状が乏しく、放っておくと動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こすリスクが高まります。原因は不規則な食生活、運動不足、肥満、喫煙、遺伝的素因など様々です。治療法は、食事・運動療法を基本に、それでもコントロールが悪ければ薬物療法を行います。異常異常症の期間が長ければ長いほど、動脈硬化は進んでいくため、適切な値に維持するすることで動脈硬化を予防、ひいては心筋梗塞などの病気を減らすことが重要です。
Q&A
悪玉コレステロールが高いと言われました。すぐに治療しなければ危ないですか?
生活習慣病は大きな病気の原因とはなりますが、言われた時点ですぐ治療しなければマズイというものではありません。
特に、指摘されて期間が短い場合、女性、脂質異常症以外に高血圧や糖尿病などの生活習慣病がない、他にも病気があってたくさんの投薬がある、など人それぞれの条件で治療の重要度や目標が変わってきます。例えば50-60代の女性の場合、女性ホルモンが動脈硬化を予防していた期間も加味して、少し高めでもしばらく様子を見ることもあります。逆に、コレステロールが高めとずっと言われてきている人や肥満や高血圧などの他の生活習慣病がある場合は早期に治療した方が良いでしょう。
値だけではなく、他の背景などさまざまを考慮して主治医と相談しながら治療方法を模索していくことが良いと思います。
高脂血症の食事療法の時に食べてはいけないものはありますか?
悪玉(LDL)コレステロールを上昇させてしまう食事は、「飽和脂肪酸」という脂質に含まれている物質です。飽和脂肪酸を多く含んでいる食事は、
牛肉や豚肉(特に脂身の部分)、ソーセージ
卵黄
バター、マーガリン、サラダ油
ポテトチップス、チョコ、クッキー、ケーキ、生クリーム
コーヒー用ミルク
です。これらの食事は、日常よく消費する食品であり、高脂血症の方は意図して摂取する量を減らした方が良いでしょう。特に、お菓子やバターや肉の脂身などは気をつけやすいかと思いますので、積極的に減らすように頑張ることが大切です。