大動脈疾患
大動脈とは
大動脈とは心臓から出た血液をさまざまな臓器に送り出すための重要な血管で、体で最も太い最も大切な血管になります。
大動脈瘤とは？症状や治療法について
大動脈瘤とは、大動脈の一部が異常に膨らんだ状態を指し、通常の直径の1.5倍以上に拡張した場合を大動脈瘤と定義することが多いです。
大動脈瘤を理解するために、大動脈を水を流すゴムのホースと例えて説明させていただくことが多いです。普段、このホースは水圧に耐えて水を送り続けています。これが私たちの体での血液の流れです。しかし、ホースに問題が起きることがあります：
- 長年使っているうちに、ホースの一部が弱くなります。これは年を取ったり、タバコを吸ったり、高血圧が続いたり、大動脈への感染症などが起きると起こります。
- 弱くなった部分は、水圧に耐えきれなくなって少しずつ膨らみ始めます。これが大動脈瘤です。
- 膨らみが大きくなるほど、その部分はさらに薄く弱くなります。最悪の場合、破裂することもあります。
- この膨らみは、胸の辺りの大動脈にできることもあれば（胸部大動脈瘤）、おなかの辺りの大動脈にできることもあります（腹部大動脈瘤）。
症状
大動脈は症状がなく膨らんできます。そのため、自分では気づかないことがほとんどです。CTやレントゲンの検査で偶然見つかったり、動脈瘤が破裂したときに発覚します。
治療法
大動脈瘤が破裂すると命に危険が及ぶ状態になり、その多くの場合緊急手術を行う必要があります。
大動脈瘤は破裂の危険性があるため、一定以上の大きさになると、①手術によって開腹や開胸し人工血管に置き換える手術、②足の付け根からカテーテルで人工血管に置き換える手術、が必要になってきます。
大動脈瘤が少しだけ大きくなっている場合、発症しないための予防法、進行を抑える方法は後述します。
大動脈解離とは？症状や治療法について
次に、大動脈解離は大動脈瘤と似ていますが、全く異なる病気です。大動脈は３層の血管構造をしています。大動脈解離とは、血圧が高いことで大動脈の内側の層が裂け、そこから血液が外側の層との間に入り込み、大動脈の壁が別れて二重になった状態を指します。これは突然起こる危険な状態です。
症状
なんの前触れもなく突然、胸の痛み、背中の痛み、お腹の痛みなどで発症します。裂けるような強い痛みと表現されることが多いです。さらに脳梗塞のように手足が麻痺したり、手足に痛みも伴うこともあります。
治療法
大動脈解離が起きた場合、
１ 上行大動脈という場所に起きた場合は手術治療が必要です。
２ 下行大動脈という場所に起きた場合は、点滴で血圧をコントロールし、痛みを和らげる治療法が一般的です。手術治療が必要になることもあります。
大動脈疾患にならないための予防方法
大動脈疾患の予防には、以下の点に注意することが重要です：
- 血圧管理： 高血圧は大動脈への負荷となり裂けたり、膨らんだりしやすくなり、主なリスクです。定期的な血圧測定や医師の指示に従った降圧薬の服用、塩分の制限をおこないましょう。
- 禁煙： 喫煙は血管を傷つけ、動脈硬化を早めてしまいます。禁煙指導や禁煙補助薬の利用も検討しましょう。
- 体重管理： 過剰な体重は心臓に負担をかけます。バランスの取れた食事を心がけ、適度な運動をおこないましょう。（週5回30分以上の運動）目指すBMIは18.5〜25で、理想BMIは22です。
- コレステロール管理： 高コレステロール血症は動脈硬化のリスクを高めます。飽和脂肪酸（肉、バター、サラダ油、スナック菓子など）の摂取を控え、必要に応じてお薬でさげる必要があります。
- ストレス管理： 慢性的なストレスは血圧上昇につながる可能性があります。規則正しい生活リズムや十分な睡眠、好きなことをしてリラックスを実践しましょう。
- 定期的な健康診断： 特に家族歴がある場合は重要です。さらに、遺伝疾患のマルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群の家族歴のある方は非常に重要です。
これらの対策を行い、健康的なライフスタイルを維持することが大動脈疾患の予防につながります。
緊急時の対応
大動脈疾患は痛みのストーリーが非常に重要です。下記に当てはまるような胸の痛みやお腹の痛みが出た場合は注意しましょう。
・「突然の」痛み
・「裂けるような」痛み
・「冷や汗が出る」痛み
・「意識の状態がおかしくなる」痛み
・「人生最大の」痛み
などは危ないサインです。早めに総合病院の受診や、救急車の要請などをご検討ください。
まとめ
大動脈瘤は、体の中で大きな血管が膨らむ病気です。多くの人は症状を感じないまま進行するので、気づきにくい病気です。しかし、この膨らみが破れると命に関わる大変危険な状態になります。そのため、早めに見つけて対処することがとても大切です。予防には、薬で血圧を下げたり、タバコを止めたり、適度に体を動かしたり、バランスの良い食事をしたりすることが効果的です。
特に年齢が高い人や血圧が高い人は、定期的に検査を受けることをお勧めします。病気が見つかっても、その程度に応じて、様子を見たり手術をしたりと、最適な対応を選びます。
症状がなくても油断せず、健康的な生活を心がけ、検査を受けることで大変な事態を防ぐことができます。自分の体に関心を持って、少しでも不安があればなんでもお答えしますので、いつでも主治医に相談してください。
