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息切れ

息切れは「症状」であって「診断名」ではない

息が切れるという感覚は、原因によって体の中で起きていることがまったく違います。
階段を上って息が上がる。それが心臓の問題なのか、肺の問題なのか、血液の問題なのか、あるいは気持ちの問題なのか。同じ「息切れ」という言葉でも、正体は全く別物です。

診察室でも、「息が切れやすくて」と話してくれる患者さんは多いのですが、原因を探るにはもう少し詳しく聞く必要があります。いつから、どんなときに、どのくらいの動作で、他に何か症状はあるか。そういった話を聞きながら、どの臓器が関係しているかを絞っていきます。

息切れの主な原因を4つ——心臓・肺・貧血・心因性に分けて、それぞれ何が起きているのかをここで説明します。

「心臓が原因」の息切れ

心臓がポンプとして弱くなるとどうなるか

心臓の仕事は、全身に血液を送り出すことです。酸素を含んだ血液が体の隅々まで届くことで、私たちは活動できます。
この送り出す力が落ちると、体は酸素不足になります。酸素が足りなければ、呼吸の回数や深さで補おうとすると、それが息切れとして感じられます。
心臓が弱くなる代表的な状態が「心不全」です。心臓の筋肉が弱くなったり、心臓の弁がうまく機能しなくなることで起こります。

心臓からくる息切れの特徴

心不全による息切れには、いくつかの特徴があります。
動いたときだけ息が切れる段階から始まり、進むにつれて安静にしていても苦しくなります。横になると肺に血液がたまりやすくなるため、「寝ると息苦しくて起き上がってしまう」「枕を高くしないと眠れない」という訴えが出ると心不全を強く疑います。
また、足のむくみをともなうことが多いのも特徴です。心臓が血液をうまく全身に送れないと、末梢(足)に血液が滞り、むくみとして現れます。「最近、夕方になると足がパンパンになる」という方は、心臓のチェックをお勧めします。

不整脈も息切れの原因になります

心臓のリズムが乱れる不整脈でも、息切れを感じることがあります。心臓が正しいリズムで拍動しないと、血液を送り出す効率が落ちるためです。
「動悸がして、なんとなく息が切れる感じがする」という場合は、不整脈を疑う必要があります。心電図や24時間ホルター心電図を記録してみると、リズムの乱れが見つかることがあります。

「肺が原因」の息切れ

肺の仕事はガス交換をすること

肺の役割は、吸い込んだ空気から酸素を血液に取り込み、二酸化炭素を外に出すことです。この「ガス交換」がうまくいかなくなると、血液中の酸素が不足し、息切れが起きます。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺気腫

長年の喫煙によって気道や肺が傷つき、空気の通り道が狭くなる病気です。息を吐くのが特に苦しくなるのが特徴で、「吐ききれない感じ」を訴える方が多いです。また、痰がよく出るなどの症状も伴えば強く疑います。
ゆっくりと進行するため、「年のせいかな」と思っているうちに相当進んでいることがあります。喫煙歴が長い方で、以前より息が切れやすくなったと感じているなら、一度肺の状態を確認したほうがいいと考えます。

喘息

気道が炎症を起こして狭くなり、空気が通りにくくなる状態です。「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音をともなう息切れが特徴で、夜間や明け方に悪化することが多いです。
子どもの病気というイメージがありますが、大人になってから初めて発症する喘息も珍しくありません。花粉症やアレルギー性鼻炎がある方は、気道過敏性が高い傾向があります。長引く咳、よるに呼吸の音が変、などの症状があればレントゲンや呼吸機能検査で診断をする必要があります。

肺炎・胸水

肺に炎症が起きる肺炎や、肺の周りに水がたまる胸水でも、息切れが出ます。発熱や咳をともなうことが多く、比較的急に症状が出るのが特徴です。レントゲンの検査をすれば判断できることが多いです。

「貧血が原因」の息切れ

酸素の運び屋の赤血球が機能しなくなる

貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビンが少ない状態です。ヘモグロビンは酸素と結びついて全身に届ける役割を持っています。これが不足すると、同じ量の血液でも運べる酸素が少なくなる。そうすると体は息を速くして補おうとします。「少し動いただけで息が切れる」「動悸がする」「疲れやすくてぼんやりする」という症状が出る場合、貧血が原因のことがあります。心臓や肺に問題がなくても、血液の状態が悪ければ息切れは起きます。

女性に多い鉄欠乏性貧血

貧血の中で最も多いのが、鉄分不足による「鉄欠乏性貧血」です。月経のある女性、妊娠中・産後の方に特に多く見られます。
食事制限をしている方、胃腸の手術をされた方、消化管出血がある方なども注意が必要です。
血液検査で比較的簡単にわかります。「健診で貧血ぎみと言われたことがある」という方は、一度ちゃんと調べてみることをお勧めします。

鉄剤で改善することが多い

鉄欠乏性貧血の場合、鉄剤の補充で数週間〜数ヶ月で改善することが多いです。ただし、貧血の原因(どこかから出血していないか、など)を確認することが先決です。自分では気づきにくい出血は胃から大腸にかけての消化管出血です。便の色が赤かったり黒かったりする場合は消化管出血を疑うため、内視鏡などの検査が必要となります。

「精神的なものが原因」の息切れ

「体の検査では異常なし」でも息苦しい

心臓・肺・血液を調べても異常が見当たらないのに、息苦しさが続く。そういった患者さんも多いです。
精神的な緊張・不安・ストレスが続くと、呼吸が無意識に浅くなったり速くなったりします。その結果、血液中の二酸化炭素が過剰に排出され、体にさまざまな不快感が出る「過換気症候群(過呼吸)」を起こすこともあります。

過換気の症状

過換気が起きると、息苦しさに加えて、手足のしびれ、めまい、動悸、胸の締め付け感が出ることがあります。
「パニック発作」として突然起きることもあれば、慢性的に呼吸が浅い状態が続くこともあります。「深く息が吸えない感じが続く」「ため息が多い」という方は、このパターンに当てはまるかもしれません。

喉に何もないのに詰まって息がしにくいと感じるヒステリー球

ストレスが強いとき、喉に何かが詰まったような感覚が続き、息がしにくいと訴えることがあります。飲み込んでも消えず、かといって吐き出せるものでもない。この症状を「咽喉頭異常感症(ヒステリー球)」と呼びます。内視鏡で喉を調べても異常は見つかりません。 漢方薬の半夏厚朴湯や柴朴湯などで症状を和らぐ事があります。

精神的なものでしょうというにはまずは体の問題を除外してから

ただし、心因性と判断するためには、心臓・肺・血液の問題がないことを確認することが前提です。「精神的なもの」と言われて安心したいところですが、体の病気を見落とさないためにも、一度きちんと調べることが大切です。精神的な原因が分かれば、呼吸法の練習や、必要に応じて内科・心療内科での対応ができます。つらさを気のせいで片付けずに、体ごと診察させてください。

受診の目安

以下の症状がある場合は、できるだけ早めに受診してください。

  • 安静にしていても息苦しい
  • 胸の痛みや圧迫感をともなう
  • 横になると息苦しくて眠れない
  • 顔色が悪い、唇や爪が青っぽい
  • 基礎疾患で、高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある
  •  

「運動したときだけ」「たまに感じる程度」でも、気になるなら受診して構いません。「このくらいで来ていいの?」と思わなくて大丈夫です。息切れは、症状が軽いうちに原因を確認しておくほうが、ずっと安心できます。

検査でわかること

息切れの原因を探るために、当クリニックでは以下の検査を組み合わせて行います。

  • 心電図(心臓のリズム・不整脈の確認)
  • 胸部X線(肺の状態・心臓の大きさの確認)
  • 血液検査(貧血・炎症・甲状腺・血糖の確認)
  • 問診・聴診(症状の詳細と身体所見の確認)

必要に応じて、心臓の超音波(心エコー)や呼吸機能検査をご案内することもあります。
「何の検査をされるかわからなくて不安」という方も、来ていただければ一つひとつ説明しながら進めます。難しいことはありません。

おわりに

息切れの原因は、心臓・肺・貧血・心因性と多岐にわたります。どれもたいしたことないと思って放置してしまいがちな症状ですが、体が出しているサインであることは確かです。
気になっているなら、その気持ちを大切にして受診をご検討ください。一緒に原因を探していきましょう。

この記事を書いた人

三浦 光太郎|カーサファミリークリニック 院長
循環器専門医・総合内科専門医・医学博士

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