湿疹とアトピー性皮膚炎
湿疹(アトピー性皮膚炎)とは?
湿疹とは、皮膚の表面に起こる炎症のことで、赤み・水ぶくれ・かゆみなどの症状が現れます。湿疹にはさまざまな種類がありますが、その中でもよくなったり悪くなったりを繰り返し、強いかゆみを伴うものを「アトピー性皮膚炎」と呼びます。
アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が低下することで、外からのアレルゲン(アレルギーの原因物質)が皮膚の内側に侵入しやすくなります。その刺激によって皮膚の奥深くで慢性的な炎症が起こり、かゆみや湿疹が繰り返される状態が続きます。
アトピー性皮膚炎とアレルギーマーチ
乳児期に始まったアトピー性皮膚炎を適切に治療せず放置すると、成長とともに食物アレルギー・気管支喘息・アレルギー性鼻炎など、他のアレルギー疾患へと発展していくことがあります。これを「アレルギーマーチ」と呼びます。
アレルギーマーチを防ぐためにも、早い段階からしっかりと皮膚の状態をコントロールすることがとても重要です。「少しくらい大丈夫」と放置せず、気になる症状があれば早めにご相談ください。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎はすぐに治る病気ではありません。症状が落ち着いているときも含めて、毎日コツコツと治療を続けることが大切です。治療の柱は「スキンケア」「薬物療法」「環境整備」の3つです。
スキンケア
入浴・シャワー時にやわらかく泡立てた石けんで皮膚をやさしく洗い、汚れや細菌をしっかり取り除きましょう。洗い残しがあると炎症の原因になるため、しわの中や耳の後ろなど細かい部分も丁寧に洗うことが大切です。
入浴後は15分以内に軟膏を塗るのがベストです。皮膚がまだ少し湿っている状態のうちに保湿剤や治療薬をたっぷりとのせることで、有効成分が浸透しやすくなり、炎症を効果的に抑えることができます。
軟膏はすり込まず、ティッシュがうっすら張り付く程度にたっぷりとのせるように塗りましょう。
薬物療法(軟膏)
炎症がある部位には、まずステロイド軟膏(ロコイド、リドメックス、メサデルムなど)を使って炎症を鎮めることが基本です。症状が落ち着いてきたら、非ステロイド系の外用薬へ切り替えていきます。
ジファミラスト(モイゼルト®)
ステロイドを使わずに炎症を抑えられる外用薬です。顔や首など皮膚が薄い部位にも使いやすく、長期使用にも適しています。
デルゴシチニブ(コレクチム®)
JAK阻害薬の外用薬で、かゆみや炎症を引き起こす免疫シグナルを皮膚の表面でブロックします。ステロイドが使いにくい部位や、長期管理に活用します。
新しい治療薬(中等症〜重症の方へ)
外用薬による治療で十分な効果が得られない中等症〜重症のアトピー性皮膚炎には、より強力な全身療法を選択することができます。
- デュピルマブ(デュピクセント®) 2週間に1回の皮下注射で、炎症の主な原因となるサイトカイン(IL-4・IL-13)の働きをブロックする生物学的製剤です。体重5kg以上のお子さんから使用でき、高い効果が期待できます。当院でも処方・投与が可能です。
- ウパダシチニブ(リンヴォック®) 1日1回の内服薬で、免疫反応に関わるJAK経路を調整し、炎症とかゆみを改善します。2歳以上から使用でき、速やかな症状改善が期待できます。感染症などの副作用リスクがあるため、定期的な血液検査と医師の管理のもとで使用します。
環境の整備
アトピー性皮膚炎の悪化には、生活環境も大きく影響します。以下の点に気をつけましょう。
- 枕カバー・シーツをこまめに洗濯し、ダニ・ほこりを減らす
- 部屋の掃除を定期的に行い、花粉やカビの除去を心がける
- タバコの煙・ペットとの過度な接触・強い日差しを避ける
- 汗をかいたらこまめにシャワーで流す
- 室温・湿度を適切に保ち、皮膚への刺激を最小限にする
治療を続けるためのポイント
アトピー性皮膚炎は、症状が落ち着いているときほど「もう治った」と感じてしまいがちです。しかし、皮膚の内側では炎症がくすぶっていることも多く、治療を自己判断でやめてしまうと再燃しやすくなります。
定期的に受診して経過を確認しながら、医師と相談して治療の内容を調整していくことが、長期的な症状コントロールにつながります。
まとめ
アトピー性皮膚炎は、正しいスキンケアと継続的な治療によって、症状をコントロールしながら日常生活を快適に送れる病気です。また近年では、従来の外用薬に加えて、デュピクセント®やリンヴォック®といった新しい治療薬も登場し、これまで改善が難しかった中等症〜重症の方にも新たな選択肢が生まれています。
「湿疹がなかなか治らない」「薬を塗っても改善しない」「新しい治療法を試してみたい」など、気になることがあればお気軽にご相談ください。患者さん一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせた治療を、一緒に考えていきます。
この記事を書いた人
三浦 陽子|カーサファミリークリニック 副院長
小児科専門医・指導医・アレルギー専門医・医学博士
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