足のむくみと心臓病
むくみの原因は、長時間の立ち仕事やデスクワーク、塩分のとりすぎ、女性ホルモンの変動といった命に関わらないものが多く占めます。
ただし、むくみの重要な原因として心不全(=心臓のポンプ機能の低下)が隠れていることがあります。日本の心不全患者は約120万人と推計され、高齢化とともにさらに増える見通しとなっています。足のむくみは、息切れと並んで心不全の症状としてとても重要です。
心臓が原因のむくみには、見分けるための手がかりがあります。むくみの出方、左右差、体重の動き、そして一緒に出ている症状がとても大切なため、診察の時もこれらを確認しながらなぜむくみが出てきているのかを考えています。
むくみはなぜ起きるのか
血管の中を流れる血液の水分は、細い毛細血管の壁からいつも少しずつしみ出し、また戻っています。出ていく量と戻る量が釣り合っているあいだ、見た目には何も起きません。むくみ(浮腫)は、しみ出した水分が戻りきらずに皮膚の下の層にたまった状態を指します。
釣り合いが崩れる理由は大きく3つ考えられます。①血管の中の圧が上がる、②血液中のたんぱく質(アルブミン)が減って水分を引き止める力が弱まる、③リンパの流れが滞る。心臓が関わるのは①です。
右側の心臓(右心系)は、全身から戻ってきた血液を受け取り、肺へ送り出しています。この働きが弱ると、行き場を失った血液が手前の静脈にたまって静脈の圧が上がる。押し出された水分が、足首やすねの皮膚の下へしみ出していきます。水分は重力に引かれるため、むくみの水分がたまる場所は足首から始まり、進むにつれてすね、太もも、おなかへと上がっていきます。
心不全が原因のむくみの特徴
心不全によるむくみで目印になるのは、次の3点です。
1つ目は、左右がほぼ同じであること。両足が同じくらい腫れます。片足だけが急に太くなったときは、心臓ではなく深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)やリンパ浮腫、足の感染症などを先に疑います。
2つ目は、下から上へ広がること。足首とすねから始まり、膝、太ももへ。一日の大半を横になって過ごしている方では、背中や腰にたまることもあります。
3つ目は、体重が増えること。むくみの正体は水分のため、たまれば体重に出ます。1週間でで2kg以上増えていたら、体に水がたまり始めた合図として扱い、要注意です。もちろんゆっくり進行する心不全もあるため、半年で2kg増えたという状態でも心不全は否定できません。
両足がそろってむくみ、朝より夕方にひどくなり、体重が増えている。この3つがそろったときは、心不全を疑い心臓の検査をおすすめします。
自宅でできるセルフチェック
すねの骨のすぐ内側、皮膚の薄いところを親指で5秒ほど押してみてください。指を離したあとにへこみが残るなら、水分がたまった圧痕性浮腫です。心臓・腎臓・肝臓が原因のむくみは、ほぼこのタイプになります。
へこみが残らず押した跡がすぐ戻る場合、別の原因を考えます。甲状腺の働きが落ちたときのむくみや、リンパの流れが滞ったむくみでは、指の跡が残りにくいとされています。同じむくみでもむくみの性質が若干異なります
あわせて見ておきたいのが、朝と夕方の差です。起きた直後は軽く、夕方にかけてひどくなるというのは心臓や静脈が原因のむくみに典型的な動きです。
さまざまなむくみの原因
むくみはもちろん心臓以外にもいろいろな原因が考えられます。特に重要なのが、むくみのほかに存在する症状です。それらの症状から、ある程度あたりをつけることができます。
| 原因 | むくみの出方 | 一緒に出やすい症状 | 検査 |
|---|---|---|---|
| 心臓(心不全) | 両足・足首から上へ・夕方に悪化 | 息切れ、動悸、横になると苦しい、体重増加 | 採血、心エコー |
| 腎臓 | 朝の顔・まぶた・全身 | 尿の泡立ち、尿量の変化、だるさ | 採血、検尿、腎臓エコー |
| 肝臓 | 両足+おなかの張り | 食欲低下、白目や皮膚の黄み | 採血、腹部エコー |
| 甲状腺の機能低下 | 押しても跡が残りにくい | 寒がり、便秘、体重増加、気力の低下 | 採血、甲状腺エコー |
| 深部静脈血栓症 | 片足だけ・急に | ふくらはぎの痛み、熱っぽさ、赤み | 採血、下肢静脈エコー |
| 下肢静脈瘤・静脈のうっ滞 | 夕方に悪化・片足のことも | 血管の浮き出し、だるさ、こむら返り | 下肢静脈エコー |
| 薬の副作用 | 両足 | 飲み始め・増量の時期と一致することも | 問診 |
| 加齢・栄養状態 | 夕方に足がむくむ | 痩せている | 採血 |
薬が原因のむくみは見落とされがちです。血圧の薬として広く使われるカルシウム拮抗薬(アムロジピンやニフェジピンなど)が代表的です。痛み止めのロキソニンやステロイド、一部の糖尿病の薬、神経の痛みに使う薬でも足がむくむことがあります。飲み始めや増量の時期とむくみの出た時期が重なるなら、自己判断で中止せず、処方した医師にお伝えください。ただし、飲み始めて数年後に副作用としてもむくみが出ることもあります、。その際は、薬以外の原因を否定しながらお薬を変更して診ていく必要があります。
片足だけが急に腫れて、ふくらはぎに痛みや熱っぽさを伴う場合は別扱いになります。深部静脈血栓症(=エコノミークラス症候群)では、足にできた血の塊が肺の血管へ流れて呼吸の症状(=重篤な疾患である肺塞栓)を起こすことがあります。数日様子を見ず、その日のうちに受診してください。
むくみ+息切れ=要注意
むくみ単独よりも、症状の組み合わせのほうが原因を探るうえで重要です。心臓の余力が減ってきたときに出やすいのは、次のような変化です。
- 階段や坂道で、以前より息が切れる
- 横になると息苦しく、上体を起こすと楽になる、そのため夜中は座って寝ている
- 夜中に息苦しさで目が覚める
- 3日で2kg以上、体重が増えた
- むくみに加えて動悸や脈の乱れ、胸の痛みを感じる
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙歴がある
横になると苦しく、起き上がると楽になる感覚は、肺に水がたまり始めた方に出ます。夜中に息苦しくて目が覚めるところまで進んでいるなら、心不全はかなりのところまで進行している可能性があり、速やかに循環器内科へ受診ください。
むくみの検査
足のむくみで受診された方に、行う検査は次のとおりです。
血液検査では、心臓の負担を映すNT-proBNP(またはBNP)を測ります。心臓の筋肉が引き伸ばされたときに血液へ出るホルモンです。BNPが35pg/mL、NT-proBNPが125pg/mLを超えたら、心臓への負担を疑って次の検査へ進みます。腎臓(クレアチニン)、肝機能、アルブミン、甲状腺ホルモン、貧血も同時に採血で確認します。
心臓超音波検査(心エコー)は、心臓の動き、弁の状態、心臓の中の圧を痛みなく直接見る検査です。ベッドで横になったまま10〜20分ほどで終わります。ポンプ機能が落ちているのか、弁の逆流があるのか、右心系に負担がかかっているのか。むくみの原因を切り分ける決め手になります。
あわせて心電図、胸部レントゲン、尿検査(たんぱく尿の有無)を行います。脈の乱れが疑わしいときは24時間ホルター心電図を追加します。むくみの原因が非心臓的であると判断した場合は、それに応じて超音波検査などの検査を行います。
まとめ
当院では、足のむくみで受診された方に、採血(NT-proBNP、腎機能、肝機能、甲状腺、アルブミン)、心電図、胸部レントゲン、心臓超音波検査までを院内で行い、原因の特定からその治療まで一貫して対応していきます。むくみが数週間引かない方、むくみに息切れや動悸が加わってきた方は、どうぞお気軽にカーサファミリークリニックへご相談ください。江戸川区西葛西や葛西にお住まいのご夫婦やご家族そろって受診される方もいらっしゃり、ご家庭で体重計と血圧計を使った見守りを始めるきっかけとしてもご活用いただいています。
むくみそのものの原因と検査を一覧で確認したい方は足のむくみのページを、循環器内科でできることは循環器内科の診療案内をご覧ください。
参考文献
- 日本循環器学会/日本心不全学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2021年改訂版)」
- 日本心不全学会 予防委員会「血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療の留意点について」
- 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」/「国民健康・栄養調査」
- 日本循環器学会ほか「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」
