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HbA1c 5.6〜6.4%と言われたら?糖尿病予備群の見方

[2026.08.27]

健康診断の糖尿病の項目で、HbA1c 5.6〜6.4%は糖尿病ではないけれども正常でもない状態です。厚生労働省の調査では、この「糖尿病の可能性を否定できない人たち」が国内におよそ1,000万人と推計されています。

糖尿病と診断されていない予備群の状態でも、血管の動脈硬化の変化は糖尿病と診断されるより何年も前から始まっています。そうした観点も交えながら、健診で糖尿病予備群といわれた場合に読んでいただける記事として書きました。

HbA1c 5.6〜6.4%とはどのような状態か

健診では、HbA1cに2本の線が引かれています。5.6%以上が保健指導判定値で、6.5%以上が受診勧奨判定値です。5.6〜6.4%は、ちょうどこの2本にはさまれた間にあたります。

空腹時血糖にも同じ構造があり、100mg/dL以上で保健指導、126mg/dL以上で受診勧奨となります。健診の紙に「要指導」「経過観察」と印字されるのは、たいていこの中間ゾーンに入ったときです。

HbA1c 健診での扱い 状態
5.5%以下 基準範囲 現時点で問題なし
5.6〜5.9% 保健指導判定値 生活習慣を見直し始める段階
6.0〜6.4% 保健指導判定値 糖尿病の可能性を否定できず、精密検査が望ましい状態
6.5%以上 受診勧奨判定値 糖尿病型。医療機関の受診が必要

ここで注意していただきたいのが、健診の判定と糖尿病の診断基準は別だという点です。

糖尿病診断基準のほうでは、空腹時血糖110mg/dL未満などを「正常型」、HbA1c 6.5%以上などを「糖尿病型」と定めています。そのどちらにも入らない状態が「境界型」。健診でひっかかった方は、ここに含まれる可能性があります。

HbA1c 5.6〜5.9%と6.0〜6.4%のちがい

同じ予備群でも、5.6〜5.9%と6.0〜6.4%ではすこし注意度合いが変わってきます。

5.6〜5.9%は、生活習慣をととのえることで正常まで戻せる余地が大きい段階です。体重、運動、食事のどれか1つを変えただけで、翌年の健診で5.5%以下に戻る方もいらっしゃいます。

6.0〜6.4%になると、糖尿病の可能性を否定できない領域です。甘いサイダーを飲んで採血を行う検査(75g経口ブドウ糖負荷試験)を行うと、すでに「糖尿病型」と判定される方が一定数まぎれています。6.0%を超えたら、その年のうちに一度きちんと調べておくことをおすすめします。

HbA1c 5.6〜5.9%は、生活習慣を見直し、速やかに改善できる状態です
HbA1c 6.0〜6.4%は、精密検査を行い、確認しておくべき状態です

糖尿病予備群でも動脈硬化は進む

糖尿病の合併症というと、目・腎臓・神経の3つが有名で重要です。いずれも高い血糖が長く続いてから症状が出るもので、予備群の段階ではまだ症状は出ません。

一方で、心筋梗塞や脳梗塞につながる動脈硬化は、血糖が糖尿病の基準に届く前から進み始めます。インスリンの効きが悪くなる変化は発症の10年以上前から起きていて、その頃には血管の内側が徐々に影響を受けています。

山形県で行われた住民調査でも、これを裏づける結果が出ました。空腹時血糖が高い群よりも、食後の血糖が高い群のほうが、心血管疾患による死亡リスクが高いという報告がありました。朝の空腹時の1点だけの血糖値を見ていても、このリスクは見えてきません。

予備群と言われた方は、血圧・脂質・喫煙の有無などを確認することがとても重要です。高血圧や脂質異常症が同時にあると、血管への負担が増えていきます。健診で複数の項目に印がついた方は、健診で異常を指摘されたらもあわせてご覧ください。

HbA1cでは見えない食後高血糖

HbA1cは、過去1〜2か月の血糖の平均を映す数字です。平均なので、食後に急上昇して数時間で戻るタイプの血糖変動は、なだらかにならされてHbA1cとしてあまり上昇しないことがあります。

空腹時血糖も同じで、朝の採血1点では食後の高血糖を捉えられません。たとえば「HbA1c 5.9%、空腹時血糖102 mg/dL」と、どちらも大きな異常はないのに、食後だけ血糖値が180mg/dLまで上がっている方がいます。

こういった方に必要な検査の1つが、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)です。検査用の甘いサイダーを飲み、30分後・1時間後・2時間後の血糖とインスリン値を測ります。2時間値が140〜199mg/dLなら境界型、200mg/dL以上なら糖尿病型です。インスリンの出方も同時に評価し、「インスリン分泌が足りないのか」「インスリンの効きが悪いのか」などの判断をおこないます。

もう1つがフリースタイルリブレなどの持続血糖測定(CGM)器の使用です。二の腕などにセンサーを貼り、ふだんの生活のまま血糖の動きを線で記録します。どの食事でどれだけ上がるかがご本人の目で見えるため、食べ方を変える動機として強く働きます。

ただし、CGMの保険適用はインスリンを使用している方のみです。予備群の段階では自費でのご案内となります。機械に関して詳しくは1日中血糖値を測定できるフリースタイルリブレ2もご参照ください。

予備群といわれたらどうすべきか

境界型から糖尿病へ進むのは、年に5〜10%といわれています。10年みれば半数前後が糖尿病型に入る計算になります。

海外の大規模な研究で、糖尿病の発症をおさえられたと報告されている介入は、次の2つです。

  • 体重を7%減らす(体重70kgの方なら約5kg)
  • 中等度の運動を週150分(1日30分×週5日、早歩き程度)

糖尿病予備群が、いちばん少ない労力でいちばん大きく結果が動く時期にあたります。糖尿病と診断されてから同じ努力をするよりも、この段階で習慣を作っておくことが重要です。

7%の減量は目標としてやや高いので、外来ではまず5%の減量をおすすめしています。70kgなら3.5kg、60kgなら3kg。1か月0.5kgのペースで半年かければ、無理なく届く範囲だと思います。

食事は、量を減らす前に順番を変えるところから始めるのが簡単です。野菜やたんぱく質を先に食べ、ごはんやパンを最後に回すと、同じ内容でも食後血糖のピークの山が低くなります。

運動は、食後30分から1時間の時間帯、ないしは早朝空腹時が効率的です。運動後は上がってきた血糖を筋肉が使ってくれるためで、食後15分の散歩を1日2回でも週150分の目標が達成できます。

睡眠の質も見落とせない要素です。短い睡眠が続くと食欲を調整するホルモンのバランスが崩れ、体重が増えやすくなります。いびきを指摘されている方では、睡眠時無呼吸が血糖と血圧の両方に悪さをしていることがあります。

また、歯周病と血糖も関係があるため、糖尿病と歯周病も参考にしてください。

当院で行う検査

血糖値やHbA1cの再測定や健診で評価できていない項目の採血検査を行います。食後高血糖が疑わしい場合は、75g経口ブドウ糖負荷試験を後日行う必要があります。所要時間は2時間ほどです。境界型か糖尿病型かの判定に加えて、インスリンの分泌能と抵抗性の評価を行います。

あわせて高血圧や脂質異常症、動脈硬化が疑わしい場合は、頸動脈超音波検査も行います。首の血管の壁の厚さとプラークの有無を、痛みなく10分ほどで観察する検査です。予備群の段階で動脈硬化がどこまで来ているかを簡単に確認できます。血圧のほうも指摘されている方は、血圧の再検査は何科?もご参照ください。

まとめ

当院では、健診結果のお持ち込みから、院内HbA1c測定・75g経口ブドウ糖負荷試験・持続血糖測定による原因の切り分け、頸動脈超音波での動脈硬化の評価、そこから組み立てる食事と運動、その後の定期フォローまで一貫して対応しています。HbA1cが5.6%を超えた方、6.0%台に乗ってきた方は、来年の健診を待たずに当院へ結果票をお持ちいただければ、お一人おひとりに合わせた食事・運動の指導や再検査をご提案します。江戸川区西葛西・葛西エリアで健診の血糖値を指摘された方は、当院までお気軽にご相談ください。

糖尿病の診断・合併症・治療の全体像は糖尿病のページをご覧ください。

この記事を書いた人

三浦 光太郎|カーサファミリークリニック 院長
循環器専門医・総合内科専門医・医学博士

参考文献

  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
  • 日本糖尿病学会「糖尿病治療の手びき2026 改訂第59版」
  • 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」
  • 厚生労働省「国民健康・栄養調査」
  • Diabetes Prevention Program Research Group. Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention or metformin. N Engl J Med. 2002;346:393-403.
  • Tominaga M, et al. Impaired glucose tolerance is a risk factor for cardiovascular disease, but not impaired fasting glucose(舟形町研究). Diabetes Care. 1999;22:920-924.
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